雲一つない6月の晴れ渡った空に多数のドラゴンが舞い、澄んだベルの音が鳴り響く。

ゼイレーム最大のルスド教寺院である、デストール大聖堂。

国内外の大勢の参列者に見守られ、アルベルト第一王子殿下とソフィア公爵令嬢の華燭の典がつつがなく執り行われた。

臣籍降下するとはいえ、第一王子と王家に継ぐ地位を持つ筆頭公爵家令嬢の結婚。王族に準じた盛大で華やかなもの。

各国首脳が参列し、次世代の筆頭公爵としてアルベルト殿下も立派に役割を果たされた。



「ソフィアお義姉(ねえ)様、お綺麗じゃったのう」

大聖堂で行われた婚姻の儀の後、うっとりした表情でそう言ったのは、マリア王女殿下。
自慢の金髪を縦巻きに結い上げ、季節の花で飾っていて、控えめな光沢の薄いブルーのシフォン生地を使ったドレス。煌めく装飾が一切なく、派手好きな彼女には珍しく、主役の花嫁に十分配慮したファッションだった。

「のう、ミリュエールもそう思わんか?」

やっぱりマリア王女からこの話を振られたな……と苦笑いしたわたしは、同意しかないからすぐに答えておく。

「そうですね……ソフィア様はほんとうにお綺麗でらっしゃいましたね。今までで一番お幸せそうで誰よりも笑顔が素敵で……烏滸がましいですが、友人として心から嬉しく思います」

ソフィア様は3年前に(不本意ながら)わたしが原因でレスター王子に婚約破棄されてしまったから、これでようやく彼女が幸せになれるんだ…と、安堵にも似た気持ちが湧いてた。