核であった紅い宝石が砕けた次の瞬間、ケルンは声なき叫び声を上げて停止する。
そしてその体はたちまち熱を失い、脆い石となって崩れ落ち始めた。
「ミリィ、早くそれから離れなさい!行き場をなくした熱が暴発するわ」
アリシアお祖母さまがそうアドバイスしてくれたから、ブラックドラゴンが急いでその場から離れる。
アスター王子とマリア王女、フランクスにも他の叔母様方が伝えてくださったらしく、早急に離れていた。
「でも、ここは王宮や近衛騎士団の近く……他の方は?」
わたしがどうしても気になってお祖母さまに訊ねれば、あっけらかんと言われた。
「ソニア妃やアリスお祖母さまが結界を張っていらっしゃるから大丈夫。それより、急いで!!」
やっぱりソニア妃もアリス高祖母様も、それぞれ役割を果たしていたんだな…なんてしみじみしている場合じゃない。アリスお祖母さまの緊迫感からして、ケルンの最期はとんでもない置き土産があるらしい。
《……来るぞ!体を低くして私にしがみつけ!》
ブラックドラゴンがそう叫んだ、その刹那……。
音なき真っ白な熱が、渦を巻いて爆発した。
わたしは咄嗟にアクアを庇い、全身で彼女を覆ったけれども。おそらくブラックドラゴンのお陰だろう。さほど熱さを感じることもなく、まばゆい光の中でケルンの最期を見届ける。
そしてその暴発によりゴーレムはすべて破壊され、当然呪術師のゴーレムも砕け散る。
辛うじて助かったらしい呪術師はアスター王子により捕縛され、レスター王子は妹のマリア王女により救出された。
……こうして、呪術師の野望は文字どおり灰燼に帰したのだった。