それでも、やはりケルンは熱光線を吐き出す。
あの巨体にどれほどのエネルギーを溜め込んだのだろう?
「アクア、左に回避!」
「ヴヒッ!」
なんとなくだけど、炎獄のケルンがどこに向けて撃つのか……が、伝わってくる。やはりこのブラックドラゴンのランスのおかげだろう。
マリンの生やした木々のおかげで、ゆっくり徐々にケルンへ近づいていく。
また、こちらへ向けて熱光線。
「アクア、今度は右だ」
「ヒヒッ!」
アクアは器用に枝を伝い、絶妙なタイミングで攻撃を回避してくれる。わたしの意思がダイレクトに伝わったような、まさに人馬一体の活躍っぷりだ。
お祖母さまたち竜騎士も、打ち合わせがなくともわたしたちを援護してくださる。
そして、おそらくアスター王子やマリア王女だろう。わたしとアクアには魔術の防御壁が展開されていた。
これとブラックドラゴンのランスのおかげで、熱光線が近くをかすめても無事だった。
(ありがとう……みんな。絶対、わたしかケルンのあの宝石を破壊する!)
ようやくケルンの近くにたどり着く。熱光線を放った後を狙い、突入する。熱光線の合間十数秒が勝負。
「行くよ、アクア!」
「ヴヒヒ!!」
アクアの勇ましい嘶きとともに、ブラックドラゴンのランスを構えてケルンへ突撃する。
「はぁあああっ!」
この1年以上、訓練を積み重ねてきた動き。何千回と徹底的に繰り返してきたそれを、今こそ活かす時!
ランスへ体重を乗せたスピードある突き。
手応え、あり。
宝石へ……ランスの穂先が届いた。



