【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


それでも、やはりケルンは熱光線を吐き出す。

あの巨体にどれほどのエネルギーを溜め込んだのだろう?

「アクア、左に回避!」
「ヴヒッ!」

なんとなくだけど、炎獄のケルンがどこに向けて撃つのか……が、伝わってくる。やはりこのブラックドラゴンのランスのおかげだろう。

マリンの生やした木々のおかげで、ゆっくり徐々にケルンへ近づいていく。

また、こちらへ向けて熱光線。

「アクア、今度は右だ」
「ヒヒッ!」

アクアは器用に枝を伝い、絶妙なタイミングで攻撃を回避してくれる。わたしの意思がダイレクトに伝わったような、まさに人馬一体の活躍っぷりだ。

お祖母さまたち竜騎士も、打ち合わせがなくともわたしたちを援護してくださる。

そして、おそらくアスター王子やマリア王女だろう。わたしとアクアには魔術の防御壁が展開されていた。
これとブラックドラゴンのランスのおかげで、熱光線が近くをかすめても無事だった。

(ありがとう……みんな。絶対、わたしかケルンのあの宝石を破壊する!)

ようやくケルンの近くにたどり着く。熱光線を放った後を狙い、突入する。熱光線の合間十数秒が勝負。

「行くよ、アクア!」
「ヴヒヒ!!」

アクアの勇ましい嘶きとともに、ブラックドラゴンのランスを構えてケルンへ突撃する。

「はぁあああっ!」

この1年以上、訓練を積み重ねてきた動き。何千回と徹底的に繰り返してきたそれを、今こそ活かす時!

ランスへ体重を乗せたスピードある突き。

手応え、あり。

宝石へ……ランスの穂先が届いた。