炎獄のケルンの核が額にある紅い宝石ということは、お祖母さま達にも伝えてある。
けれども、お祖母さまたちがあらゆる手段で攻めても、その宝石は破壊されない。
アスター王子がおっしゃっていた“物理的に見えず魔力ある者には視えない仕掛け”が災いしている?
「このブラックドラゴンのランスならば、どうにかできるかもしれないのに…」
思わず無意識に呟きランスを握りしめると、アクアがそれに反応する。
「ブヒッ……ビヒヒン!」
なにか言ってるけど。まさか、あのアクアが珍しく慰めたり励ましてくれた……?
…と思ったけど。白目になって歯をむき出し、舌を思いっきり出してる。
うん、いつも通り人を小馬鹿にしてるね。
けれども、わたしのなかにまたアクアの仔馬であるマリンの声が響いた。
《……ミリュエール。大丈夫、ボクにまかせて》
しゃらんしゃらん…あのガラスのベルの澄んだ音が響き渡ると、わたしとアクアの足元から、いきなり勢いよく水が噴き出した。しかもそれは凍ったように透明の大木となり、成長とともにわたしにたちを持ち上げていく。
急速に大きくなった大木は、あっという間に戦いの舞台へわたしたちを押し上げただけでなく、炎獄のケルンの巨体までもその内へ捕らえた。
「ありがとう、マリン。これでランスが届く。行こう、アクア!」
「ブヒッ!!」
愛馬とともに、炎獄のケルンへ向けて木を伝い走り出した。



