【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


炎獄のケルンの核が額にある紅い宝石ということは、お祖母さま達にも伝えてある。
けれども、お祖母さまたちがあらゆる手段で攻めても、その宝石は破壊されない。

アスター王子がおっしゃっていた“物理的に見えず魔力ある者には視えない仕掛け”が災いしている?

「このブラックドラゴンのランスならば、どうにかできるかもしれないのに…」

思わず無意識に呟きランスを握りしめると、アクアがそれに反応する。

「ブヒッ……ビヒヒン!」

なにか言ってるけど。まさか、あのアクアが珍しく慰めたり励ましてくれた……?

…と思ったけど。白目になって歯をむき出し、舌を思いっきり出してる。

うん、いつも通り人を小馬鹿にしてるね。

けれども、わたしのなかにまたアクアの仔馬であるマリンの声が響いた。

《……ミリュエール。大丈夫、ボクにまかせて》

しゃらんしゃらん…あのガラスのベルの澄んだ音が響き渡ると、わたしとアクアの足元から、いきなり勢いよく水が噴き出した。しかもそれは凍ったように透明の大木となり、成長とともにわたしにたちを持ち上げていく。

急速に大きくなった大木は、あっという間に戦いの舞台へわたしたちを押し上げただけでなく、炎獄のケルンの巨体までもその内へ捕らえた。

「ありがとう、マリン。これでランスが届く。行こう、アクア!」
「ブヒッ!!」

愛馬とともに、炎獄のケルンへ向けて木を伝い走り出した。