けれども、やはり魔術の発動は時間がかかる。
アスター王子は無詠唱での発動も可能だけど、マリア王女はまだ初心者。たどたどしくも、懸命に呪文(ルーン)を詠唱をしている。
「くそ。……きりがない!」
フランクスが思わず呟くのも無理ない。
ゴーレムは破壊しても、破壊しても、素材があれば無限に再生する。まして材料である土や石は豊富だ。
時間が経つにつれ群がる数が増えていくものだから、いくら普段鍛えていても対応しきれなくなる。
「フランクス、頑張れ!ここが踏ん張りどころ…うわっ!」
フランクスを励まそうとした途端、危うくゴーレムの一撃が顔に当たりそうになった。
マリア王女だけでなく、アクアやフランクスの馬も護らねば…って。
「ビヒヒン!」
パカッ、と見事な音を響かせて、アクアはゴーレムを後ろ蹴りで破壊してる。うん……馬の後ろ蹴りは人を一撃で殺せるほど強烈だからね。さすが我が愛馬。
それはともかく、今はフランクスのぼやきはよく解る。
今は夜明け前だけど、視界がゴーレムで埋め尽くされている。一体どれだけの数が群がって来ているんだろう。
「いや、弱音を吐くな!今がチャンスなんだ!」
頭をふり、ランスを握る手に力を込める。
(けど……こちらでさえこうなんだ。アスター王子は一人で大丈夫だろうか?)
彼は稀代の魔術師であり、剣の腕も一流だ。それは信頼できる……でも。
部下として、婚約者として。彼の身が気がかりだった。
できたら、今直ぐ駆けつけたいくらいだ。



