「アスター王子、大丈夫です。マリア王女殿下は必ずわたしがお護りいたしますので」
ブラックドラゴンのランスを手に、わたしはアスター王子に言い切った。ランスの存在を確認した彼は、肩をすくめて苦笑い。
「母上といい、マリアといい、ピッツァといい、ミリィ、おまえも……オレの周りにいる女性は皆、勇敢で頼もしいな」
「……来るぞ!」
フランクスがやや緊張した声音で叫ぶと、炎獄のケルンが再び動き始める。
「おそらく、次の一撃は今までにない規模だろう。だが、それを防げば勝機は見える」
アスター王子もただ漠然とケルンの攻撃を防いでいたわけじゃない。観察と分析を繰り返し、ケルンの特徴を洗い出していた。
ケルンは確かに、地下からエネルギーを吸い上げて熱光線に変換している。動力もそうだろう…とのこと。
「あの熱光線は確かに脅威だが、だんだんとタイムラグが生じてきている。おそらくは近場のエネルギーが枯渇していて、吸い上げるのに時間がかかっているのだろう」
「……ふむ。ならばそれを利用せねばならぬな」
マリア王女がとある提案をしてきた。
「あのケルンが一撃を放った後に、ケルンと地面の間に魔術で膜を張るのじゃ。一瞬でよい。さすれば動きは止まるはずじゃな?」
「確かに、理屈ではそうなるな」
2人が話し合っている間、わたしはケルンを見上げる。その顔らしい面がこちらを向いたのを見て、額に紅い宝石のようなものが輝いているのを見つけた。



