「フランクス、きみがビシッとマリア殿下を注意するといいよ」
「え、ええっ?俺が!??」
ストレッチを終えたフランクスが摸造剣を手にし、空いた手で自分を指さした。明らかに勘弁してくれ!って顔だ。
「そうだよ。本当ならぼくが言いたいけど、ぼくは以前のようにマリア殿下にお会いできないから、きみが王女殿下に諫言(かんげん)してほしいんだ。
彼女は常に大人に囲まれてはいるけど、近い年頃の子どもは少ないはず。きみの言う事ならまだ聴いてくださるかもしれない」
マリア王女殿下は確かに聡明だし、頭の回転は早い。兄のレスター王子と違って母国語以外話せたりするし、あらゆる能力も高い……けど。まだ十歳にもならない子どもだ。
今のうちにわがままで高慢な性格をどうにかしないと、レスター王子の二の舞になるかもしれない。
王女殿下ならば他国の王族と政略結婚する可能性も高いのだから、あの性格のまま嫁げば国際問題になるのは確実だ。いや、さすがに結婚可能な16歳までには少しは落ち着くとは思うけどね。
「もし、咎められたらぼくが言ってた!と言ってくれていいから。アスター殿下の婚約者のぼくなら、将来の義姉(かも?)だし」
最近、あちこちで女性をナンパするレスター王子の問題だけでも頭が痛いのに、マリア王女殿下までもが騒動を繰り広げるとなると、王宮が混乱する可能性がある。少しでも早く落ち着いてほしかった。
「よ…よし、わかった!やってみるな」
摸造剣を手にしたフランクスに、わたしは自分の摸造剣を手に構えた。
「……ということで、ちょっと打ち合いいいかな?」
「おお、久しぶりだな。いいぞ!」
気合いを入れ直したフランクス相手に、小一時間ほど真剣な打ち合いをしあった。



