なぜかアスター王子の顔色が見る間に真っ赤に染まり、そのまま固まってしまう。
「……アスター兄上、いちゃついてる場合ではないぞ?」
マリア王女がそう言うと、ようやくフリーズを解いて動いた。
「兄上、わらわが来たからには100人力じゃぞ!」
マリア王女が胸を叩いて兄にそう請け負うけれども、やっぱりアスター王子は渋い顔をした。
「マリア……これは遊びでない。今すぐここから離れなさい」
「あの炎の石人形は地下より無限のエネルギーを供給されておる。その循環を断てば攻撃は止まる…じゃろ?」
マリア王女は兄の言葉を皆まで言わせず、言葉をかぶせてニヤリと笑った。
「アスター兄上、わらわはゼイレームの王女じゃ。そして近い将来、騎士の妻となる者。国を、人を護る志(こころざし)は誰よりもあるつもりじゃ。ましてや、実の兄上が囚われておる……その不始末を、妹であるわらわが拭わずして誰がする?」
マリア王女は、真剣な面持ちでアスター王子へそう告げた。
「兄上が騎士であるならば、わらわは王女じゃ。自分自身の義務を果たさねばならぬ!」
その決意と意気込みは、決して侮るべきものじゃない。
わずか9歳でも、彼女は立派な王族だ。
アスター王子はしばらく目をつぶり悩んでいた様子を見せたけれども…やがて、彼女の決意を受け入れた。
「……わかった。では、マリア。手伝ってくれるか?」
「無論じゃ!」
マリア王女は、嬉々として勢い良く返事をした。



