ところが、意外な人物が現れた。
この熱地獄のなか、マリア王女を前に乗せたフランクスが愛馬とともに駆けつけてきたんだ。
灼熱の中でどうやって来たのかわからないけど…とても危険だ。すぐ引き返させねば。
「ミリィ、加勢に来たぞ」
「マリア王女、フランクス!危ないですから安全な場所へ引き返してください!」
当然、わたしは2人を助けたくてこう注意するしかない。
確かにマリア王女は、ブラックドラゴンの襲撃時も震えながらも立ち向かう勇気を見せた。侍女を護るために身を挺して。
でも、今の危険性はブラックドラゴンの時とは比較にならない。今のわたしには、正直マリア王女たちを護りながら戦う余裕がない。
けれども、マリア王女から驚く事を指摘された。
「あの小さな方の石人形に、レスター兄上がおるのじゃな?」
確かに、呪術師のゴーレムにはレスター王子が囚われたままだ。マリア王女は聡い。下手に誤魔化すより素直に認めた方がいいだろう。
「はい。そうです……ですが、今この灼熱地獄をご覧になっていますよね?あの溶岩の石人形(ゴーレム)は、アスター王子も手を焼く伝説クラスの魔物です。ですから今すぐ退避してください!御身の身の安全は保証できませんよ」
「……なればこそ、わらわが駆けつけたではないか!兄上の不始末は、妹であるわらわが補う。ソニア妃には魔術の指導もしていただいておるからの」
マリア王女のおっしゃる事は、なるほど確かにそうだった。魔力の防御壁で熱を遮断していたから、こうして駆けつけられたのか。



