「ケルンの気は引きます。アスター王子はしばらく休んでいてください!」
「ミリィ!」
アスター王子にそう言い残し、しばらくアクアとともに熱地獄の中を走ってみたけれども、チリとも熱を感じない。それだけブラックドラゴンの熱耐性が優れているんだろう。アクアも涼しい顔だ。
「よし…!」
そして、わたしを見つけた呪術師が当然ゴーレムへ指示を出す。
「ケルンよ、このエストアールの小娘も消し炭にしてやるがいい!」
ゆっくりゆっくりとこちらを向いたケルンが、巨大な口を開いてその奥が赤く輝く。
「アクア、全力で避けるよ!!」
「ブヒッ!」
なるべく平地の何もない場所を選び、そちらを目指す。
伝説クラスのあの破壊光線を直接浴びたら、さすがにブラックドラゴンの結界でもどうなるかわからない。
「……来る!!アクア、右だ!」
「ビヒヒン!」
なんとなく、勘だった。右側のうなじがチリチリとしたから、その感覚を頼りにすれば、ケルンの光線がギリギリのところでかすめる。
「……!」
ものすごい、熱量だった。
結界越しなのに、肌を焼きそうな熱。伊達に神話クラスの魔物じゃない。
撃たれた先は庭園のある場所。誰もいないことは確認済みだ。
(少しでも気を反らせて……後は)
ゴーレムである以上、炎獄のケルンにも弱点はあるはずだ。
それをなんとかして見極めねば!



