【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「ケルンの気は引きます。アスター王子はしばらく休んでいてください!」
「ミリィ!」

アスター王子にそう言い残し、しばらくアクアとともに熱地獄の中を走ってみたけれども、チリとも熱を感じない。それだけブラックドラゴンの熱耐性が優れているんだろう。アクアも涼しい顔だ。

「よし…!」

そして、わたしを見つけた呪術師が当然ゴーレムへ指示を出す。

「ケルンよ、このエストアールの小娘も消し炭にしてやるがいい!」

ゆっくりゆっくりとこちらを向いたケルンが、巨大な口を開いてその奥が赤く輝く。

「アクア、全力で避けるよ!!」
「ブヒッ!」

なるべく平地の何もない場所を選び、そちらを目指す。
伝説クラスのあの破壊光線を直接浴びたら、さすがにブラックドラゴンの結界でもどうなるかわからない。

「……来る!!アクア、右だ!」
「ビヒヒン!」

なんとなく、勘だった。右側のうなじがチリチリとしたから、その感覚を頼りにすれば、ケルンの光線がギリギリのところでかすめる。

「……!」

ものすごい、熱量だった。

結界越しなのに、肌を焼きそうな熱。伊達に神話クラスの魔物じゃない。

撃たれた先は庭園のある場所。誰もいないことは確認済みだ。


(少しでも気を反らせて……後は)

ゴーレムである以上、炎獄のケルンにも弱点はあるはずだ。
それをなんとかして見極めねば!