(なにか方法は無いのか!?わたしにできることは……なんでもいい!命を賭けてアスター王子を……国を助けたい!)
短剣を胸にわたしが必死に考えていると、心のなかに再びブラックドラゴンの声が響いた。
《……ミリュエールよ》
その声が聞こえてすぐ、短剣がほんのりと輝き始める。
《そなたの無垢で真摯な想い……しかと感じた。授けた武器が、そなたに相応しい形へ変貌を遂げる時……》
「えっ……」
驚いたことにブラックドラゴンの短剣は徐々に形を変え、巨大化すると同時に馴染んだ武器へと変化する。
全長が1メートルと少しある突撃型の槍……騎士の持つランスへと。
「……これは!?」
《私の角は悪魔が恐れる聖具ともなる。そして、私は火属性の竜。火炎への耐性は万全よ。さあ、ミリュエールよ。その手で己の道を切り開け》
紅く輝くブラックドラゴンのランスは、驚くほどしっくりと手に馴染み、重さも心地よい。
「ありがとう……ブラックドラゴン。アクア、行くよ!」
「ブヒッ!!」
わたしの最高の愛馬はまったく恐れずに、むしろニヤリと不敵な笑みをくれる。本当に頼もしい。
「ミリィ、なにをするつもりだ…!やめろ!!」
アスター王子が気づいて止めようとしてくださる。でも。
「アスター王子、わたしがあなたを助けますから。はぁあああっ!」
いつもの訓練のようにランスを水平に構え、突撃する。アスター王子の張った結界を抜け……その外へ。
出た瞬間、予想通りの熱に炙られそうになる。
けれどもアクアの身体は水色の膜に包まれ、わたしの身体は紅く輝く。おそらくアクアは仔馬が、わたしはブラックドラゴンのランスが護ってくれているんだ。