「“炎獄のケルン”……神話にもある悪魔の使い……よもや、そんなものまで召喚するとはな。悪魔に魂を売ったか」

アスター王子の言葉に、呪術師は狂ったように笑い続ける。

「はははははは!わしにとり、貴様らこそ悪魔だ!わしが本来あるべき地位を奪い、のうのうとふんぞり返り……これは、復讐などというチンケなものではない。革命だ!この国を本来あるべき姿に戻すのだ!!」

そして、呪術師は手を振りかぶる。

「さあ、ケルンよ!この国の間違った連中を一宇残らず焼き尽くせ!!」

呪術師の指示が飛んだ瞬間、炎獄のゴーレム…ケルンから赤い光線が放たれる。その矛先は明らかに王宮で。

「させるか!」

アスター王子が咄嗟に防御の魔法陣を展開する。

けれども、やはり伝説にあるケルンの火力は想像以上のもののようで……なんとか直撃は免れたものの、四散した炎があちこちに燃え移る。

「ふふふ……いつまで防げるか見ものだわ。ケルンのエネルギーは無限大だからな」

呪術師は愉しそうに嗤う。そして、次々と指示を出しケルンに赤い光線を放たせた。

その度にアスター王子が防御魔法を展開するけれども、だんだんとつらそうになってきた。

「アスター王子、大丈夫ですか?わたしもなにか手助けを」
「いや、大丈夫だ。それよりミリィはオレのそばを離れるなよ」

確かに、周囲は地獄のような光景が広がっている。あちこち火が燃え広がり、マイナスの魔力に満ちている。結界の外に一歩出れば焼け死ぬだろう。
魔力の消耗が相当激しいのか、青い顔をしながらアスター王子はおっしゃるけれども……
魔力が無いわたしは、なにもできないのか?歯がゆい思いで炎獄のケルンを見上げた。