「マリア王女殿下なら、たぶん自分の目的が叶うまで止まらないと思うよ。レスター殿下より厄介なのは、意志の強さと頭の良さかな?」
わたしがそう指摘すると、フランクスもしみじみ同意してくる。
「……だよな。俺はまだそんなにお会いしたことはないけど、カイルさんが手を焼いてるのは散々見てるからな。いっつも裏をかかれて予想外の動きをするんだ」
げっそりやつれたフランクスは気の毒に思うけど、わたしが直接手助けはできない。マリア王女殿下にお会いしてひと言言いたくても無理だろうし…。
だから、レスター殿下に数年接してマリア王女殿下にもお会いした経験上のアドバイスをすることにした。
「フランクス、ハッキリ言ってマリア王女殿下はちょっと慢心されていると思うよ。ぶっちゃけ、小生意気な子どもだと思う」
おそらく本人がいたら不敬罪だと騒ぐだろう失礼な物言いだけど、別にそう咎められても構わないくらいの決意でフランクスに言う。
「……まあ、確かにそうだな。マリア殿下付きの近衛騎士も近衛兵も振り回されて、かなり不満が溜まってるのは確かだ」
だろうな、とわたしも思う。いくら仕事とはいえ、仕える相手でやる気に差が出るのは人として当たり前だ。
わがまま放題で何をされても当たり前どころか、見下してすぐ罰を与えようとする人間と、常に謙虚で感謝しこちらを思いやるような、穏やかで優しい人間と。どちらが働いて嬉しくなるか、は自明の理だ。



