「は、なにが逆恨みよ!今のおまえたちこそ王統の簒奪者(さんだつしゃ)であり、簒奪王朝ではないか!!」

やはり、呪術師が抱くこの国への恨みの源が、かつてその身に流れていた王家の血。

「本当ならば、正当な王家の血を引くわしが女王とならねばならぬのだ!それを、僭称者(せんそうしゃ、本来の身分を越えた身分を名乗ること)など即位させおって!ゼイレームの今の偽王を倒し、わしが女王となるが本来あるべき姿だ!!」

呪術師の身勝手極まりない主張は続いた。その間にわたしとアクアはこっそりと動く。いちいち話を聞き続ける必要は無い。

「……話はわかった」

アスター王子が忍耐強くすべての話を聞いていてくれた。いきなり否定したりするでなく、呪術師が喚き終わるまで辛抱強く最後まで耳を傾ける。引き伸ばすためだとしても、すごいなと思う。

「わかったというならば、わしを解放しろ!あの偽王を殺し、わしが即位するのだ!協力するならば、命だけは助けてやる!!」

この期に及んでも意気盛んな呪術師は、ある意味感心する。
けれども、アスター王子は笑った。
凍りつきそうな底冷えのする目で。

「……父上を殺そうとしてみろ」

そして、腰に挿したバスターソードを鞘からスラリと抜いて呪術師へ向かい言い放った。

「オレが、その場で引き裂いてやる」