ソニア妃のということは、ノプット王家由来でもある。そんな貴重な指輪をわたしだから、わたしにだけ渡したい、と。
なんだろう……
宝石とかあまり興味は無かったはずなのに、この指輪がどんな宝石よりも輝いて美しく見えた。
アスター王子の防御魔術がかけられていたからじゃない。
きっとこれがただの石や木彫りの指輪でも、わたしには一番綺麗に見えるに違いない。
「ありがとうございます、アスター王子」
指輪を指に填めると胸が暖かくなり、自然と頬が緩むのを感じた。
たぶん、笑顔をアスター王子に向けていたと思う。
彼の顔がより赤みを帯びて、ゴホンと不自然な咳ばらいをしていた。
「……オレ以外に、そんな顔を見せるなよ」
「えっ、なにかおっしゃいましたか?」
小声でボソッとなにか言ったから訊き返してみたけど、彼は「なんでもない!」とファルコの横腹を蹴って一歩先へ抜け出した。何なんだろ?
「もうすぐあのゴーレムに接近する。作戦通りに頼むぞ!」
「はい!」
呪術師のゴーレムは王宮にあと少しのところにまで近づいている。あの巨体だと王城を破壊する事など造作もないだろう。
「アクア、行くよ!」
「ブヒッ!!」
愛馬とともに、ゴーレムを追い抜いて先回りを果たす。
そして、再び呪術師と相対した。



