「ああ…俺の上司のカイルさんがマリア王女殿下付き近衛騎士の責任者だもんな。マリア王女が度々脱走騒ぎを起こすから、カイルさんの責任問題にもなりそうなんだよ…」
フランクスがぐったりしている理由がわかった。
要するに、マリア王女に振り回されて駆けずり回っている上に、上司の騎士が責任を取らねばならない事態になりつつある…と。
そうなれば、心身ともに疲れ果てるのは当たり前だ。
(本当に……あの兄妹はどこまで他人を振り回し迷惑をかければ気が済むんだろう)
レスター王子の婚約者時代、わたしは当然マリア王女にもお会いしてる。けど、当時6つという幼さにも関わらず、彼女はどこまでも自分本位で尊大でわがままだった。
“わらわはそなたのような賤しい者を義姉(あね)とは認めぬからな!”…なんて、開口一番に言われたんですから。
赤茶けたブロンドをこれでもか、とくるくる巻いて紫の瞳を持つ、勝ち気そうでもよく整った顔立ち。ただ、小生意気ではあるけれども…聡明さは兄にしてのレスター王子より遥かに上に見えた。
“そなたは本気で兄上を愛してはおらぬだろう?”
……なんて、次にお会いしたときに指摘されたのですから。
ただ…。
“わかるぞ!わらわのように白馬の王子様を探しておるのじゃろ?だが、レスター兄上は色々残念じゃからな……なに、兄上もそのうち飽きるじゃろ。それまでの辛抱じゃ”
なんて。兄の飽き性を鋭く指摘されて驚いたけど……夢見る乙女仲間扱いは、ちょっと勘弁してほしかったかも。



