【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


アクアが来てくれたおかげで、機動力は上がった。
しかし、このままではゴーレムの足止めが精一杯だ。

周囲の無数のゴーレムたちも、地響きを上げながら進撃している。

今は視界が暗い夜。

月明かりのおかげでまだ視認はできるものの、あちこちで煙が上がっているところを見ると、おそらくゴーレムが炎を発生させている。

(どうする…?この短剣では到底ゴーレムに攻撃しきれない)

時折巨大ゴーレムからの攻撃があるけど、すべてアクアがかわしてくれる。たまに接近して短剣でゴーレムの足へ攻撃を仕掛けても、やはりびくともしない。

けれども巨大ゴーレムがゆっくりと方向転換し、向かう先が王宮だと判明した瞬間。全力で攻撃する事にした。

「アクア、ゴーレムの進行方向へ先回りして!」
「ブヒッ!」

愛馬はわたしの意図を正確に汲み、あっという間にゴーレムを抜き去るとその正面へ回り込む。

「止まりなさい!あなたの相手はエストアールの娘であり、将来の王妃たるわたしだ!!」

呪術師相手に、精一杯に声を張り上げた。すると、ゴーレムの肩の辺りに呪術師が出現し睨みつけてくる。

「ふん!おまえは後でじっくり料理してやるさ」
「あっ!」

呪術師が手を翳すと、アクアとわたしの周りにあっという間に茨の棘の檻が出来上がる。短剣で突いても叩いても、びくともしない。

「そこで指をくわえながら、すべての終焉を見てるがよい!エストアールの娘よ!!自らの弱さを悔いながらな」

高笑いを響かせながら、呪術師は快哉を叫んだ。