でも、いくら気力で耐えようとしても、汗をかいた手が先に悲鳴を上げた。凹凸が少ないゴーレムの石肌を掴んでいた手が、手汗でつるりと滑る。
「あっ!」
慌ててゴーレムの手を掴もうとしても、すでに時遅し。そのまま20mの高さから落下した。
「くっ…」
素早く視界を巡らせて近くの木の枝を探しても、ちょうど手近なものがない。すぐにダメージが少ないよう受け身を取った。
「ブヒヒー!」
「えっ!?」
ドサリ、と背中に柔らかい感触を感じた。
それは、懐かしくて馴染んだ感覚。
ふわり、と一瞬だけ浮遊感を全身に感じ、その後慣れた上下動感とぬくもりと香りに、すぐにその正体を理解した。
「……まさか、アクア?」
「ブヒッ」
すぐ身体を起こして素早く騎乗体勢を取る。駆け足のアクアの手綱を掴み、救ってくれた愛馬に感謝した。
「ありがとう、アクア。おかげで助かったよ」
「ビヒヒン」
気にするな、とアクアは言ってくれた。
でも、こんな大変な時に幾度も危機をくぐり抜け、わたしを助けに来てくれたんだ。本当に、何度感謝してもし足りない。
「あなたが来たら百人力だ。一緒に呪術師を捕らえよう!」
「ブヒッ!!」
アクアが勇ましい返事をしてくれて、心強い。
やはり騎馬は機動力は格段に上がる。
こちらを踏み潰そうとゴーレムが足を踏み降ろしても、素早く避けることができた。



