【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


でも、いくら気力で耐えようとしても、汗をかいた手が先に悲鳴を上げた。凹凸が少ないゴーレムの石肌を掴んでいた手が、手汗でつるりと滑る。

「あっ!」

慌ててゴーレムの手を掴もうとしても、すでに時遅し。そのまま20mの高さから落下した。

「くっ…」

素早く視界を巡らせて近くの木の枝を探しても、ちょうど手近なものがない。すぐにダメージが少ないよう受け身を取った。


「ブヒヒー!」
「えっ!?」

ドサリ、と背中に柔らかい感触を感じた。
それは、懐かしくて馴染んだ感覚。

ふわり、と一瞬だけ浮遊感を全身に感じ、その後慣れた上下動感とぬくもりと香りに、すぐにその正体を理解した。

「……まさか、アクア?」
「ブヒッ」

すぐ身体を起こして素早く騎乗体勢を取る。駆け足のアクアの手綱を掴み、救ってくれた愛馬に感謝した。

「ありがとう、アクア。おかげで助かったよ」
「ビヒヒン」

気にするな、とアクアは言ってくれた。
でも、こんな大変な時に幾度も危機をくぐり抜け、わたしを助けに来てくれたんだ。本当に、何度感謝してもし足りない。

「あなたが来たら百人力だ。一緒に呪術師を捕らえよう!」
「ブヒッ!!」

アクアが勇ましい返事をしてくれて、心強い。
やはり騎馬は機動力は格段に上がる。

こちらを踏み潰そうとゴーレムが足を踏み降ろしても、素早く避けることができた。