【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


それも、一体や二体ではない。

見渡す限り、無数のゴーレムが出現していたんだ。

ものすごい地鳴りとともに木々が激しく揺れ、必死に幹にしがみつく。
目の前の石でできた湯殿がたちまち変形し、ひときわ巨大なゴーレムとなってそびえ立つ。その頭に呪術師が立ち、高笑いを響かせた。

「ふふふふふふ…今からすべてを破壊してやるさ。わしを否定しおったこの国のすべてを…!!」
「レスター王子!」

揺れが収まると同時に、わたしはゴーレムへ向けて進んだ。
おそらくレスター王子はあの巨大なゴーレムの中だ。呪術師が中に閉じ込めてしまったんだろう。

全速力で枝から枝を伝い、ゴーレムへ接近する。一番手近な枝へ登りきると、ブラックドラゴンの短剣を構えた。

「はぁあっ!」
「ふん!小癪だわ」

巨大ゴーレムの右手がうなりを上げて迫る。おそらくわたしを叩き落とすつもりだ。

(けど、チャンスだ!)

やはり巨体だけあり、動きが鈍い。しっかり動きを見定めれば、動線を読める。

(今、ここだ!!)

ギリギリで上に飛び移ると、通過したタイミングでゴーレムの手に飛び移る。そして、そのまま手首にしがみついた。

振り落とそうと激しく手を振られるけど、耐える。

(耐えろ!これくらいなんともない!!)

頭がぐらぐらして気分が悪くなっても、ぐっと堪えた。