それも、一体や二体ではない。
見渡す限り、無数のゴーレムが出現していたんだ。
ものすごい地鳴りとともに木々が激しく揺れ、必死に幹にしがみつく。
目の前の石でできた湯殿がたちまち変形し、ひときわ巨大なゴーレムとなってそびえ立つ。その頭に呪術師が立ち、高笑いを響かせた。
「ふふふふふふ…今からすべてを破壊してやるさ。わしを否定しおったこの国のすべてを…!!」
「レスター王子!」
揺れが収まると同時に、わたしはゴーレムへ向けて進んだ。
おそらくレスター王子はあの巨大なゴーレムの中だ。呪術師が中に閉じ込めてしまったんだろう。
全速力で枝から枝を伝い、ゴーレムへ接近する。一番手近な枝へ登りきると、ブラックドラゴンの短剣を構えた。
「はぁあっ!」
「ふん!小癪だわ」
巨大ゴーレムの右手がうなりを上げて迫る。おそらくわたしを叩き落とすつもりだ。
(けど、チャンスだ!)
やはり巨体だけあり、動きが鈍い。しっかり動きを見定めれば、動線を読める。
(今、ここだ!!)
ギリギリで上に飛び移ると、通過したタイミングでゴーレムの手に飛び移る。そして、そのまま手首にしがみついた。
振り落とそうと激しく手を振られるけど、耐える。
(耐えろ!これくらいなんともない!!)
頭がぐらぐらして気分が悪くなっても、ぐっと堪えた。



