【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「調子に乗るなあああっ!」

呪術師の纏う黒いローブが膨れ上がり、一気に爆風が広がった。

「くっ」

勢いよく飛ばされかけて、すぐに木の枝にしがみついたけれども。呪術師から距離ができてしまった。

「レスター王子!無事ですか!?」

風圧がすごい中で必死に呼びかけてみても、反応が無い。
まさか、本当にやられてしまったのだろうか?

(すぐにでも、助けねば!)

いくら唯我独尊自分中心の身勝手ワガママ王子でも、一応王族だ。近衛騎士を目指すならば護るべき対象であり、生命を掛けて救出せねばならない。

「レスター王子、気を確かに!今、お助けします」

最大限の大きな声で姿が見えない彼に声を掛けてから、暴風の中幹を登り始めた。風圧で息が苦しいし進みも遅いけれども、少しずつでも前へ進む。

「ふん、小癪な!」

ふわり、と浮いた呪術師がさらに両手を挙げて嗤う。

「……わしを本気で怒らせたことを後悔するがよい!」

そう告げた呪術師が両手を下げると、ユニコーンの木が激しく揺れる。そして、予想外の事態に発展した。

近くの近衛騎士団の施設だけでなく距離がある建物、さらに地面。そのすべてが変形し盛り上がると、たちまち人の形に形成された。

それも、一体10mはありそうな巨体を誇る石人形や土人形だ。

「あれは、ゴーレム!!」

お父様から聴いたことがある、呪術師の造る究極の攻撃兵器。
石や岩や土で作られた人造兵。いくら攻撃しても素材があれば再生して戦い続ける厄介な存在だ。