レスター王子のナルシストっぷりは続く。彼は呪術師へ手を伸ばしてこうのたまうた。
「怒らないでおくれ、いくらボクが麗しく愛しいとはいえ」
「うるさい、黙れ!」
ブチ切れた呪術師がなにか魔術を掛けるのが見えた。黒い靄のような霧がレスター王子を取り囲む。
(まずい……このままだとメダリオンの防御魔術が保たない)
アスター王子の掛けてくれた防御魔術とはいえ、何度も強力な魔術を防いでいる。そろそろ効果が危なくなってくる頃だろう。
木々の枝を伝い登る。あと少しのところで太い枝を見つけ、そこを足がかりに呪術師の元へ。幸いレスター王子のナルシストっぷりに気を取られて、呪術師はわたしが間近に接近した事に気づいていない。今がチャンス!
ブラックドラゴンの短剣を振りかぶり、一気に突っ込む。
「はぁああっ!」
「くっ!」
呪術師がすぐに雷撃を生み出し、こちらに放つ。けれども短剣がガードしてくれたのか、こちらへはかすりもしない。
「調子に乗るな!」
ズン、とまた再びあの重圧を感じた。今度は上下左右全方位から。一度、足が鈍るけれども。
「負けない……!あなたなんかに。はぁああっ!」
気合いを入れてブラックドラゴンの短剣を振るうと、手応えあり。空間を切り裂くと、目の前にあった圧力が消えて足が前へ進む。
「レスター王子!ご無事ですか!?」
近づいたわたしが声をかけると……
返事がない。
(まさか……)
虫並みにしぶといレスター王子も、さすがに強力な呪術でやられてしまった!?



