そして、レスター王子の最強技が発動する。
サラリと髪をかき上げた彼は、呪術師へ向かい見当違いな言葉を吐いた。
「フッ…ボクがいくら美しいからって、惚れてはいけないよ。ボクには愛しのマイハニーがいるんだからね。キミの気持ちにはこたえられない」
『あ、別にいいです』
呪術師とわたしの声がハモったのは、偶然ではないよね。絶対。
空気を読むどころか、周囲の状況を全く理解しないレスター王子……あの神経の太さはもはや驚異的だ。
呪術師も怒りに満ちた顔で目を釣り上がらせている。うん、気持ちはわかりますよ。レスター王子に慣れたわたしですら、ちょっとだけイラッと来ますからね。
レスター王子の無神経さは怒りを煽るだけ。
当然、呪術師は額に青筋立てて憤怒の顔つきに。
「気味が悪いことを言うな!!」
呪術師が手から炎を放ちレスター王子を炙ろうとしたけれども、わたしが首に掛けておいたメダリオンの防御魔術で防ぐことができた。
「フッ……ボクが愛しすぎて独り占めするためかい?美しさも罪だな」
……いや、本当。レスター王子がなにを言ってるかわからないんですが。
それはともかく、このままでは不味い。
レスター王子のナルシストっぷりで、呪術師の怒りのボルテージが上がっている。さすが煽るにかけては一流のレスター王子だけある。こちらとしては、ありがた迷惑なんですがね。



