マリンのおかげで身体の痛みがなくなったし、どうやら傷も回復もしたようだ。それでも万全とは言えないけれども、今ここで動けるのはわたしのみ。早くレスター王子を救出せねば。
地面から生えたガラスのベルが鳴った木は、空間のあらゆる場所に枝を伸ばしている。触れたらきちんと感触があり、飛び乗れば軋む事無く耐えてくれる。このまま呪術師の元まで行けそうだ。
「よし…!」
一番手近な枝に飛び乗ると、枝から枝に飛び移る。
呪術師が囚われている場所まで、ただひたすら上を目指す。
「いた……レスター王子、無事ですか!?」
呪術師まであと数mの時点で、念のためレスター王子に声を掛けてみた。まぁ、あらゆる意味でしぶといから大丈夫だろうけれど。
「ミリュエール……!囚われの愛しの王子を救いに来たんだね…マイハニー!」
「あ、大丈夫ですね」
うん、わかっていたけど。こんな状況にもかかわらず、レスター王子は通常通り。目をキラキラさせながら大げさに両手を広げてこちらに気持ち悪い流し目を寄越す…うん、大丈夫だ。
というか、誰か愛しだ。とツッコミをしたくなる。
「おのれ……調子づきおって!」
さすがに呪術師もぶちキレたのか、レスター王子の呪縛を強くして彼が再び「きゃっ!」と黄色い声を上げた。
「ボクたちの美しさと強い愛と絆に嫉妬かい!?」
「わけがわからないことをほざくな!」
うん、このときばかりは呪術師のレスター王子へのツッコミに同意したくなった。



