【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


ゆっくりと視線を戻すと、呪術師の老婆がこちらを睨みつけていた。
落ち窪んだ目は赤く輝き、炎のように燃えて見える。

「小癪な…!ユニコーンの仔馬ごときに、わしの邪魔はさせん!」

老婆が手を振りかざすと、再び四方八方から見えない圧力が襲い来る。けれども、しゃらん…と澄んだ音が響くと、地面からたちまち木が芽吹いてわたしの周りを取り囲む。

それは、かつてユニコーンが棲んでいた湖の……丘にあったガラスのベルが生った木。
ユニコーンが現れる度に鳴った懐かしい音がすべてに響き、成長していく木とともに空間を満たしていく。

しゃらん…しゃらん…しゃらん…

「な、なんだこの木は!?」

はじめて、呪術師の老婆から焦りとも狼狽ともとれる声が聞こえた。

たちまち大木に成長したガラスのベルの木は、攻撃している魔獣兵だけでなく、呪術師をもその中に閉じ込めていた。

「うう……」

枝に鳴った無数のガラスのベルが風に揺れて鳴る度に、呪術師は頭を抱え苦しみだした。

これは、チャンスだ。
アクアとユニコーン、そしてマリンがくれた呪術師を捕らえる貴重なチャンス。この機会を逃すわけにはいかない!

「ブラックドラゴン!聞こえる?」
『……ミリュエール、まだそちらへ力を十分には貸せぬ。慎重にゆけ』
「わかった!」

呪術師の呪縛が解けたおかげでブラックドラゴンの短剣より、再び魔力を感じることができる。

呪術師はまだレスター王子を捕らえたままだ。彼を救い出した上で、捕縛せねば!