「その声……マリン?」
『ウン、ミリュエールがナマエ……くれたカラ……ボクも父さんのように力が使えるようになったんだ』
今すぐ助けるからネ、と彼が言ってくれた瞬間、ふわっと身体が浮遊感に包まれた。
快適な温度のお湯に浮かんでいるような感覚。
不思議なことに、身体の痛みが引いていく。
液体のなかにいるのに、楽に呼吸ができる。
徐々に身体が感覚とともに自由を取り戻し、ゆっくりと動かせばすっかりすべてが戻っていた。
そして目の前に小さな光が生まれたかと思うと、それは大きく形をとる。白い馬体に額の角と背中には翼。黄金色のたてがみ。
アクアから生まれて数ヶ月の仔馬姿でない、完全に成長したユニコーンとペガサスの姿だった。
「マリン……あなた……そんなに大きくなれたの?」
『ウン。ボク、名前もらえた。みんなに知らせてくれたカラ…現世と結びつきがもらえた。ミリュエールのおかげ。ミリュエール、父さんと母さんとボク……ずっと護ってくれた。だから、今度はボクが護るよ』
マリンはニコッと笑う。その表情は愛馬アクアそっくりで、なんだか涙が出そうになった。
「ありがとう……でも、マリン。この呪術師はわたしが捕まえないと」
『ウン、知ってる。母さんモミリュエールはいつも頑張るから助けなさいって言ってタ』
愛馬にまでわたしの性格を熟知され、嬉しいやら複雑だ。
『ミリュエール、ボクが力を貸すよ。だから頑張って』
マリンがそう告げた次の刹那、視界が開けた。