【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


婚約式を経て正式な婚約者として認められれば、将来の王子妃となるべくお妃教育が始まってしまう。

まぁ、レスター殿下の婚約者となった際はひと通りのお妃教育は受けているから、それはすっ飛ばしてもいいんじゃないか…と個人的には思うけど。そういうわけにはいかないんだろうな。

というか。
そもそもそれ以前の大前提として、わたしはアスター王子から本気で求婚もされていないのだし、わたし自身アスター王子と結婚したいのか…という気持ちがわからない。

こんな曖昧で不安定な状態のまま、なし崩しに結婚まで進めてしまえば、お互い不幸になる結果が見えてしまう。

第一、わたしはお父様に言ったように騎士見習いとして修行中の身。王子殿下の婚約者となれば、様々なことに時間を取られてそれどころでなくなってしまう。
本気で騎士を目指すわたしにすれば、それは不本意な状態だ。

だから、少し悩んだ末にお父様に申し出た。

「お父様、話し合いにはわたしも同行させて頂いてよろしいでしょうか?自分自身のことですから、しっかり見聞きし、意見もしたいのです」

お父様は予想していたようで、すぐ頷かれた。

「おまえならそう言うと思ったよ。よかろう。ソニア妃殿下へお窺いを立ててみよう」
「あ、それから。アスター殿下のご同席も願えますか?」
「ふむ……確かに、アスター殿下にはお伺いしたい事もたくさんあるからな。その件もともにしたためておこう」

羽根ペンを手にしたお父様がソニア妃へのお手紙を書き始めたから、わたしは失礼します、と頭を下げて副団長室から退出した。