アスター王子の声は微かにかすれ、震えていた。

わたしを抱きしめる手も、そっと包み込むように優しい。

なにかに怯え、恐れていたかのように。

(そっか……わたし……アスター王子を心配させちゃったんだな)

高祖母様がおっしゃる“ひどい火傷”……アスター王子は直に見ていた。瘴気のドラゴンから落ちた際に助けてくださったんだから。
あの時はただ無我夢中で、アクアと仔馬を逃がすことしか頭に無かった。

夢の中で仔馬が出てきたから、仔馬も母馬のアクアも無事なことは確かだろう。

とにかく今は、アスター王子を安心させなくては。

「……はい。すみませんでした……心配をさせてしまって」
「別に構わない。きっとその場でオレが止めたとしても、おまえは行動を変えなかっただろうからな」

……うん、苦笑いするアスター王子はやっぱりわたしの事をよく理解してらっしゃる。さすがに上司であり、婚約者。1年以上ともにいただけある。

「はい。アクアと仔馬を助けるためならば、迷っている時間はありませんでしたから。自分自身ができる精一杯をするだけです。たとえ無謀でも無茶でも、大切なものを護るのが騎士ですから」

わたしは迷いなくキッパリと言い切った。きっと、同じ時間を繰り返したとしても、わたしがすることは変わらない。戦いを恐れていては、なにも護れないのだから。