【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


仔馬のキラキラ期待に満ちた瞳が、ちょっと痛い。

実は、わたしは名付けが不得手なんだよね。
ごっこ遊びや物語が大好きな女の子ならば得意かもしれないけど、わたしは本を読むよりも野山を駆け回っていたし、思考が男寄りだからなあ。

でも、ここではきちんと考えなきゃいけない。

人間の勝手な都合で、産まれてすぐから母馬と引き離されていた仔馬。たった数ヶ月でも、ずっと独りで耐えてきたんだ。名付けはお詫びにもならないけれども…せめて、精一杯考えたい。

「わかった……わたしで良ければ考えておくよ。ただ、ごめんなさい…ちょっと時間が欲しい」
『イイヨ。ボク知ってる。母さんが、“ミリュエールは考えることが苦手だ”って笑って言ってたから』
「………………」

………いや、やはりというか。愛馬にはバレバレでしたな。
ってか、アクア絶対馬鹿にした笑いをしながら、ノリノリでわたしの弱点を子どもに教えてるよね!?

一応、わたしは御主人様なんですが?

「あはは~それはありがたいかなぁ…(アクア…絶対後で覚えてなさいよ)……わわっ!?」

棒読み口調で返すと、急に身体がふわりと浮く。水面からの光が強くなり、急速に上へと引っ張られた。

『……ミリュエール、君の目が覚めるんだよ。じゃあね』

仔馬の声が聞こえてすぐ、目が開けられないほどのまばゆい光に包まれた。