仔馬のキラキラ期待に満ちた瞳が、ちょっと痛い。
実は、わたしは名付けが不得手なんだよね。
ごっこ遊びや物語が大好きな女の子ならば得意かもしれないけど、わたしは本を読むよりも野山を駆け回っていたし、思考が男寄りだからなあ。
でも、ここではきちんと考えなきゃいけない。
人間の勝手な都合で、産まれてすぐから母馬と引き離されていた仔馬。たった数ヶ月でも、ずっと独りで耐えてきたんだ。名付けはお詫びにもならないけれども…せめて、精一杯考えたい。
「わかった……わたしで良ければ考えておくよ。ただ、ごめんなさい…ちょっと時間が欲しい」
『イイヨ。ボク知ってる。母さんが、“ミリュエールは考えることが苦手だ”って笑って言ってたから』
「………………」
………いや、やはりというか。愛馬にはバレバレでしたな。
ってか、アクア絶対馬鹿にした笑いをしながら、ノリノリでわたしの弱点を子どもに教えてるよね!?
一応、わたしは御主人様なんですが?
「あはは~それはありがたいかなぁ…(アクア…絶対後で覚えてなさいよ)……わわっ!?」
棒読み口調で返すと、急に身体がふわりと浮く。水面からの光が強くなり、急速に上へと引っ張られた。
『……ミリュエール、君の目が覚めるんだよ。じゃあね』
仔馬の声が聞こえてすぐ、目が開けられないほどのまばゆい光に包まれた。



