【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?



『リュミエールよ、気をつけろ』

突然ブラックドラゴンの“声”が、わたしの中に響いてきた。
彼はわたしたちへの宣誓通りに、城を中心にゼイレームを守護している。今はソニア妃や高祖母様の結界があるとはいえ、王宮から離れた自然豊かな人気がない地域。ブラックドラゴンの警告はありがたい。

『良からぬ意志が水に潜んでやって来る。急いで離れろ』
「わかった!アクア、早く水辺から離れよう」

わたしがそう告げると、アクアはすぐにそれに従ってくれる。仔馬はきょとんと不思議そうな顔をしていたけど、わたしは謝りながら話した。

「ごめんね。今は緊急事態だから、急いでここを離れなきゃならないの」
「ヒュン」

なんとなくだけど、仔馬が“わかった”と言ってくれた気がする。

その無垢で無邪気な目はなんの疑いも思惑もなく、ただただひたすら澄んで綺麗な瞳。
まだ、幼い子どもと同じ。

その目を見たわたしは、そのまま仔馬をゼイレームの王宮へ連れて行く事に決めた。


「……自然がここほどはないけれど、一緒に来る?アクア……お母さんと一緒に居られるよ」
「ヒュン」

即答だった。
仔馬もやっぱり人間の言葉を理解してる。そして、やっぱりお母さんと一緒にいる事を選んだ。

わたしの意志は、決まった。
アクアの仔馬の存在を公表して、親子が一緒に居られるよう全力を尽くそう。そして、この親子はなにがあっても護る。そう決めた。