「アクア、ごめんね?」
「ヒヒン?」

翌朝。馬のお世話をするために厩舎を訪れた時、思わずアクアに謝罪していた。
当然何のことだ、とアクアは不思議そうな顔をしていたけれども…。

「あなたの仔馬……やっぱり寂しいみたい。お母さんと一緒にいたいんだって」
「ブフッ」

そうか、とアクアは答えた気がする。
母馬なのだから、おそらく彼女は仔馬の気持ちに気づいているはずだ。それでも大人しく厩舎の中に…わたしのそばにいるのは、騎馬だからだ。

「アクア、あなたはどうしたい?本当の気持ちを教えて欲しい。わたしに育てられたからだとか、そんな恩やわたしの騎馬という役割を抜きに、あなた自身の素直な気持ちを」

たぶん、アクアはわたしの言葉をほぼ理解できている。
以前から、馬ではあり得ないほどの知能の高さを感じていた。それは、幻獣ペガサスの血を引いていたゆえだと今ならば納得できたけど。

「……ヒン」

わたしの話を聞いたアクアは、眉を寄せ(?)考える仕草をする。良くも悪くも馬鹿正直な彼女だから、きっと自分自身の気持ちに素直になるはず。

「ブフッ」

しばらくして鼻息を荒くした彼女は、結論づけた様子。


クイッ、と湖の方を顎で示すから、そちらへ行くぞと言っている様子。どうやら仔馬に直に会って話したいらしい。

(アクアが母馬として仔馬といたくて騎馬をやめたいと決めたなら、ちゃんと答えなきゃね)

寂しいけれども、仕方ない。やっぱり親子ならば一緒にいるべきなんだから。