「……ふむ、なるほどね」

高祖母様はすべて納得したかのように、腕を組んで頷いた。

「おい、ミリィ。この件はいったんアタシが預かる。だからひとまず自分の胸の中にしまっとけ」

高祖母様はそうおっしゃるけれど…どうしても素直に頷くわけにはいかなかった。

「すみません……アスター王子にだけは話してもいいですか?」

わたしはどうしても彼と情報を共有したくて、高祖母様にそう頼み込んだ。

「今回のこの仔の件は、人間の愚かさが招いた事態。さらに、国家機密レベルの情報が利用された問題もあります。将来的に王太子…国王となる、アスター王子には知らせておいた方がいいかと」

個人的な私情が入っているのは否定できない……けれど、今国王陛下へお知らせしてしまえば、きっと仔馬は何らかの処罰は免れないだろう。去年の狩猟会で起きた御料地での密猟事件の国民のように……悪気はなくとも、罪を犯せば罰せられる。それは、法治国家としてあたりまえなのだけれど。

「……別にいいぜ。なに、アタシも悪いようにはしないから安心しな」

ビッ!と親指を立ててニカッと笑う高祖母様は、そう言えばとあたりまえな指摘をしてきた。

「そろそろ、その仔馬にも名前をつけてあげなよ。仔馬ってだけじゃ呼びづらいだろ。情が湧かないようにしてるんだろうが、もう無理だろ?」

高祖母様のおっしゃる通りだった。
今の今まで仔馬の名前をつけなかったのは、いずれ彼がユニコーンのように幻獣として生きる場合のことを考えていたからだ。

(名前…名前か)

「いい名前……アクアと考えなきゃね」

嬉しそうにわたしにすり寄る仔馬。撫でているとアクアの仔馬時代を思い出して、涙が出そうになった。