【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「……ったく、あの朴念仁のヘタレめ!ミリィを泣かせたら絞めてもぐって言ってやったのに!!」

ピッツァさんが憤って椅子から立ち上がり、ブンブンと拳を振り回す。

「アスターめ!アタシの剣でついたものをちょん切ってやるぜ!」

自慢の愛剣ブラックソードを抜いた彼女は、何かを切る仕草をするけど……すごい殺気。

「ありがとうございます、ピッツァさん。ぼくのために怒ってくださって…でも、ほどほどにしてくださいね」

何をちょん切るのかわかりませんけど、アスター王子も今ごろ背筋に悪寒を感じてるよ、絶対。

「そおねぇ…アスターが女のコになってもいいわぁ~わたしのドレスを着せてみようかしらぁ」
「お、いいな?一度だけじゃなく女装させようかと思ったことあるしな。めっちゃ綺麗な顔立ちしてるからな〜」

ニシシ、とピッツァさんが怒りを忘れて楽しげに笑う。また話が逸れる……とため息を着きそうになったけど、ソニア妃がぴしっと締めた。

「ミリィちゃん」
「はい」

わたしの両手をそっと包み込んでくださる暖かい手。騎士らしい厚みがある硬い手…けど。わたしは、真っ白でなめらかな傷一つない手より、こんな苦労して努力の跡がわかる手の方が好きだった。

「アスターはほんと素直じゃないヘタレな息子だけど、どうか見捨てないでやってちょうだいね。わたしはミリィちゃんが一番アスターに相応しいと思うもの。素直じゃないけど、どうかついていってあげてね」
(騎士として…かな?)
「はい、わかっています。ぼくはいつまでもお側にいます。アスター王子と約束、しましたから…」

首に下げたメダリオンを手に載せれば、なんとなく安心できる。それを見たソニア妃は、にっこり笑ってくださった。

「いい顔ね…ミリィちゃん。やっぱりあなたが義理の娘になってほしいわ」