「やっぱり…そうでしたか」
わたしが王太子妃になることはまだ公式に発表されてはいないけれども、王宮内では公然の秘密となっている。アスター王子はともかく、わたしが将来王妃になることが気に食わない連中はいるだろうと思っていたけれども……わりにストレートな手段で来たな、と思う。
「しかし、色もなく無味無臭で口にする前によく気づけましたな?」
ジョワン医師が不思議がるのも無理はない。水に混入された毒はほんの僅か。よほど毒物に慣れていなければ判別は不可能だっただろうけれども。
「……これです。これらがわたしを護ってくださいました」
わたしは首に下げたメダリオンと、身に着けていた短剣を机に置いた。
アスター王子から贈られたメダリオンには幾重にも護身の魔術が掛けられていて、ブラックドラゴンの莫大な魔力が宿る短剣にはわたし自身が魔力に敏感になり異変を察知できるという副作用があった。
毒が混入されていたのは、わたしの水筒のみ。だからあの場で騒いで皆を不安にさせるわけにはいかなかった。
ただでさえ初のトーナメントに向けて皆ピリピリ神経質になっている大切な時期に、わたしの事情で皆の集中力を乱すわけにはいかない。
「ふむ。さすがにアスター王子ですのぅ。愛しきおなごを護る対策は万全なようですな」
そして彼がチラッとドアを見遣ると、それとほぼ同時にガチャッと乱暴にドアが開く。
「ミリィ、大丈夫か!?」
息を弾ませたアスター王子が、医務室へ飛び込んできた。



