「おお、ミリュエールどの。久しぶりじゃの」
近衛騎士団の医務室には、顔馴染みの御典医であるジョワンさんがいる。白髪白髭の好々爺といった風情のご年配男性だ。
現在の国王陛下のその前の国王陛下の子どもの頃からずっとこの医務室の常勤というから、一体おいくつになられるやら。
「はい、ご無沙汰いたしてます。ジョワンさん」
わたしが軽く頭を下げて挨拶すると、彼の目尻が下がってくしゃりとした笑顔になる。
「今日は、どういったご要件かな?元気そうに飛び込んできたからには、怪我や病気ではありますまいかの?」
さすがに長年騎士団にいらっしゃるジョワン医師。わたしの様子だけで、大体の事情を察してくださったらしい。これならば話が早くて助かる。
「……これを」
先ほどフランクスに渡された水筒をジョワンさんへ差し出す。中身はほとんど地面へぶちまけておいたけれども、念の為わずかの量を残しておいたんだ。
「……ふむ」
渡された水筒を見たジョワン医師は、当たり前に蓋を開けて内容を確認する。くん、と匂いを嗅いだ後に水筒を傾けて中身を皿に注ぐ。
「……これは、毒……ですな」
様々な確認をした後にジョワン医師がそうハッキリと告げるまで、そう時間はかからなかった。



