ピッツァさんは大胆に脚を組むと、ひらひらと右手を動かした。
「ま、さすがにあのアスターも飢えてオオカミ状態だろうが、ミリィを大切にしてっからあんま無理なことはしてこねえはずだ」
「無理な……こと」
先ほど彼女から聞いた夜の夫婦生活のすべてが、個人的には“無理だ”と言いたかった。
以前王女を始めとする令嬢方とのお茶会で、
マリア王女がわたしに、と夫婦生活についての市販の教本を持ってきてくださったことがあった。
その本はなんだかんだ言って押し付けられ…もとい、預かる事にはなったけれども。実は多忙過ぎてなかなか読めてない。チラッと拝見した時は裸の男女が抱き合う絵を見た覚えがあるけれど。
その時、なんでかわからなくて……とんちんかんな疑問をみんなにぶつけてしまっていた。
あの時は本当に知らなかったから、仕方ないといえば仕方ないけど。
9つのマリア王女でさえご存知であったのに、15にもなる遥かに年上のわたしがどれほど無知だったか……恥ずかし過ぎて憤死しそうだ。
「おーい、赤くなってんとこ悪いが、そろそろ出ねえとアスターが迎えに来ねえか?ああいった普段はおとなしいやつはブチギレると暴走するかんな。そろそろ腹くくって行って来い」
ピッツァさんが指摘してきたとおりに、そろそろ時間的にまずいのは確かだ。
「あ、色々ありがとうございます。お先に失礼しますね」
ぺこりと頭を下げると、「おう、頑張れよ!無体な事されたらアタシが教えた一撃必殺を放て」とピッツァさんは見送ってくださった。



