けれども、悔しいことに後の打ち込みではアスター王子にことごとくかわされてしまった。
どんな動きでも涼しい顔で対応されてしまうから、あらかじめ行動が読まれている…なんて思ってしまうくらい。
「そろそろ止めろ。睡眠時間が無くなるぞ」
「……あと、一合だけお願いします!」
わたしが模造剣を握りしめたままそう返事すると、アスター王子はフッと笑ってすぐに後ろへ下がっていく。
(速い……!でも、それに対応できなきゃ!)
戦いの最中相手がどんな予測不能な動きであろうと、臨機応変に対応できなければやられる。スピードはわたしの持ち味の一つだから、負けるわけにはいかない。
踏み込むのではなく、小刻みなステップで彼に着いていく。
(アスター王子の歩幅からすれば……あと3歩、2歩…ここだ!)
「はっ!」
着地予想点で彼を捉え、足を狙って一撃放った……はずだけど。いつの間にか彼の姿がなくて素早く身体を反転させれば、後ろに回り込まれたアスター王子に体ごとぶつかってしまった。
「そろそろ終われ。本当に休めなくなるぞ」
「はい……」
今日も、自分がまだまだだと実感してしまう。未熟さが悔しくて、訓練したりない。でも、アスター王子のおっしゃる通りに、身体を休め万全な状態を保つのも騎士の務めだ。
歯噛みしながらもタオルが欲しくて歩こうとしたら、なぜかアスター王子に後ろから抱きしめられた。



