【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?



けれども、悔しいことに後の打ち込みではアスター王子にことごとくかわされてしまった。
どんな動きでも涼しい顔で対応されてしまうから、あらかじめ行動が読まれている…なんて思ってしまうくらい。

「そろそろ止めろ。睡眠時間が無くなるぞ」
「……あと、一合だけお願いします!」

わたしが模造剣を握りしめたままそう返事すると、アスター王子はフッと笑ってすぐに後ろへ下がっていく。

(速い……!でも、それに対応できなきゃ!)

戦いの最中相手がどんな予測不能な動きであろうと、臨機応変に対応できなければやられる。スピードはわたしの持ち味の一つだから、負けるわけにはいかない。

踏み込むのではなく、小刻みなステップで彼に着いていく。


(アスター王子の歩幅からすれば……あと3歩、2歩…ここだ!)

「はっ!」

着地予想点で彼を捉え、足を狙って一撃放った……はずだけど。いつの間にか彼の姿がなくて素早く身体を反転させれば、後ろに回り込まれたアスター王子に体ごとぶつかってしまった。

「そろそろ終われ。本当に休めなくなるぞ」
「はい……」

今日も、自分がまだまだだと実感してしまう。未熟さが悔しくて、訓練したりない。でも、アスター王子のおっしゃる通りに、身体を休め万全な状態を保つのも騎士の務めだ。
歯噛みしながらもタオルが欲しくて歩こうとしたら、なぜかアスター王子に後ろから抱きしめられた。