「はあっ!」
話し合いがひと段落したから、今度はアスター王子相手に剣を振るった。打ち合いではなくて、彼は素手でわたしは模造剣。
剣技は1年前より上達しているとは思うものの、なかなか彼に当てることはできない。
(足の捌き……筋肉や目の動き……力の流れ。呼吸と間合い。一瞬でも見逃すな!)
アスター王子は普段情けない面ばかりが目立つけれども、やはり年季が違う剣技の達人。裏をかいたつもりでも、あっという間に読まれてしまう。
(次は右横に動くから……ここだ!)
いくつもフェイントを組み合わせて、裏の裏をかいても、一点集中の攻撃はあっさり看破されてかわされてしまった。でも、それは想定済み。
「はっ!」
横薙ぎに反転させた模造剣で足を狙うけど…流れるような動きでスッと避けられてしまった。
それでも、あきらめない。身体をひねって着地点へ向かい、一点集中の攻撃。
微かだけど、当たった手応えを感じた。
「……やった!…っと!」
ポコン、とアスター王子に手刀で頭を軽く小突かれて慌てて気を引き締める。こんな程度で喜んでいたら、戦場じゃ命がいくらあっても足りない。
「戦いの最中に気を抜くな!現場ではちょっとした油断が死に繋がるぞ。常に緊張感を持て!」
「はい!」
もう一度、剣の柄を握りしめ直す。わたしは汗だくで呼吸が荒いのに、アスター王子は汗一つかかず涼しい顔だ。こういったところでも、経験の差を感じてしまう。



