「父上とも話したことはあるんだ。ゼイレームの教育は遅れてる…と。無論、父上が初等教育を軽く見られているわけじゃない。各地に学舎を建設する案を出されたが、貴族院の反対で実現出来なかったんだ」
アスター王子の話から、やっぱり今の国王陛下が素晴らしい御方だと再認識できる。ただ、貴族院の存在が厄介だ。ゼイレームは君主制とはいえ、貴族で構成される議会である貴族院が国王の政務を監視してる。愚王が生じた時にはストッパーとなるけれども、こういった時はデメリットにもなる。
「……ですよね。ですから、今から根回しをしておかなきゃなりませんよね」
「根回し?」
「はい。貴族院が厄介なら、周りにいる当主…もしくは、その跡継ぎと懇意になっておけばいいかと。幸い、わたしは従騎士仲間とは良好な関係を築いてます」
現状、従騎士仲間は貴族のお坊ちゃまが多い。長男でも箔をつけるため、騎士の叙任を目指す。貴族令嬢ならば王宮で侍女をして、箔をつけるみたいに。
皆まだ10代の若者だけど、将来は確実に当主になる少年たちだ。若い今ならばまだしがらみも少ない。
「アスター王子もピッツァさんとか、親しい人はいますよね」
「まぁな。従騎士時代の仲間や戦友にはそろそろ貴族の跡継ぎとなる者もいる」
アスター王子の年齢からすれば、早い人は爵位を継いで当主となってもおかしくはない。わたしより遥かに戦場を経験しているし、仲間として絆も深いだろう。



