【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「王妃になりたい理由ができたな」

なぜか、アスター王子がとても嬉しそうに見えた。
隠そうとしても、口もとがほころんでいますよ。

「王妃になる覚悟はしてる、と言ったじゃないですか。それに……わたしは、普通の学校も作りたいんです」

去年の夏にあった狩猟会の密猟事件。あれは、地元の人間が貧しさに耐えかねて御料地で起こした事件だった。

エストアール家の領地は肥沃で農業林業漁業すべて盛んだ。それゆえに、民も豊かでまず食いっぱぐれない。だから王都に来て、アスター王子に同行してこの1年様々な土地へ行き、ゼイレームの現状をつぶさに見てきて現実を知った。

エストアール領ほど豊かで余裕のある土地は稀なのだ、と。

貧しいゆえに子どもは小さな頃から働かねばならず、その日暮らしが精一杯。大凶作が起きれば飢餓で子どもを捨てる親さえいた。

やはり、経済的に余裕がないと子どもに勉強…という発想は生まれないだろう。だから、騎士養成学校と同じで、何らかのメリットをつけないと学校を作っても親が子どもを学ばせようなんて思わないだろうな。

「……なら、食料が肝だな。学校に行けば食事にありつける、だけでも親のモチベーションが違うんじゃないか?」

わたしの考えを聞いたアスター王子がそう提案してくださって、目からうろこが落ちる思いだった。

「そうか。騎士寮のように、昼食を出すとかでもいいですね」