「……ともかく、だ」
ゴホン、と咳ばらいをしてアスター王子はその場を仕切り直した。
「アクアはおまえの騎馬である事に誇りを持っている。今、この瞬間だとてそうだろう。甘い感傷は逆に彼女に失礼だと思うが」
「……アクアに失礼、ですか」
「そうだ。騎馬は実際に騎士になれば、共に死線をくぐり抜ける苦楽を共にするパートナー。甘ったるい感情などかなぐり捨てる必要な場面など、いくらでもある。非情にならねばならない時だ。おまえもわずかだが経験した」
アスター王子がおっしゃったのは、おそらくユニコーンでの戦いや侯爵邸での戦い…対人での実戦のことだろう。
その度に、わたしは自分自身の無力さを感じ、歯がゆい思いをしてきた。
そして、話し合いなど通じない人間には言葉が無力なことも思い知った。
戦いでは、甘さを、余計な感情を切り捨てねばならない。
フランクスが以前模造剣から本物の剣の帯剣を許された時に言ってた、人を斬る覚悟。
人を斬るならば、命を奪う。そして、命を奪われる覚悟。
わたし自身も、寮でアスター王子の武器を手入れしていて、曇りなく輝く刃を美しいと思うと同時に……これが、人の命を奪うものだと、その重さに震えた時もあった。
もちろん、騎士を目指すならば十分に理解してきたつもりだ。
けれども、いざ実戦となれば…自分自身の決意などがいかに甘くて脆いかが、解ってしまうんだ。



