「ミリィ」
フランクスと模造剣で打ち合いをしている最中、アスター王子が訓練場に現れた。最近はなかなか姿を見なかったから珍しい。
「あれ、アスター王子。お仕事は終わったんですか?」
「ひと区切りはついた。やはり身体を動かさないと鈍るからな」
訓練着に着替えた彼は、軽く準備運動を始める。すると、なぜかフランクスがこんなことを言ってきた。
「あ、じゃあ…そろそろおれはこれで」
「え、なんで?今、打ち合いでいい感じだったじゃないか。もう少しいいだろ?」
ついつい仲間のフランクスには男言葉を使ってしまう。やっぱりこちらの方がわたしには話しやすいし、気心知れた仲間で友達だから、ついつい素の自分自身が出てしまう。
けど、フランクスはちらっとアスター王子を見たあとに、苦笑いをしている。
「いや……王子様がご機嫌ななめみたいだし」
「は?」
この場で王子と言えば、一人しかいない。
わたしは後ろにいたアスター王子を振り向くと、彼はなぜかサッと顔をそむけた。
……うん、これは間違いないわ。
湧き上がる怒りを誤魔化さないわたしは、特大の笑顔でアスター王子を呼ぶ。
「アスター王子……ちょっといいですか?」
「な、なんだ?」
クイッと指先で彼を招くと、のこのこやって来る。その彼に、腹の底からの叱責を浴びせて差し上げました。
「まだ子どもの従騎士相手に、なに大人気ないことをなさっているんですか!ヤキモチ焼いてる暇があれば、とっとと剣を振ってください!!」



