それだけでない。
わたしと同い年の15歳になった彼は、また一層背が伸びて体つきが逞しさを増している。
鍛えればその分きちんと肉体に反映される。
男性ならば当たり前のことだけれども……正直な気持ちだと、今でもそれは羨ましい。

わたしが同じ筋肉量をつけるには、どれだけの努力が必要だろう。

「フランクス、また筋肉量増えたよね…」
「ああ、まぁな。最近カインさんの指導でトレーニング内容を変えたからな」
「いいなぁ…ぼくにも分けてほしい」
「そりゃ無理だな」

人形に向けて打ち込みを始めたフランクスに苦笑いをされてしまったけど、ついつい漏れた本音は悩みのタネのひとつ。

「侯爵邸での戦いでも痛感したけど、ぼくの剣技には重さが圧倒的に足りないんだよね。軽さとスピードはある程度通用したけど、やっぱりそれだけだと限界があるんだ」
「そうなのか?」
「うん。このブラックドラゴンの短剣が助けてくれなかったら、かなり危なかったんだ」

常に身に着けている短剣を鞘から抜けば、訓練場の仄暗さの中で刀身が紅く輝く。見る人が見れば、魔力を帯びているのがひと目で判るだろう。

「そういや前言ってたな、その短剣はブラックドラゴンの魔力があるって」
「そうだよ。だから魔力に耐性がないぼくは、不甲斐なくも先月魔力酔いで熱が出ちゃったんだ」
「なら、もう大丈夫なのか?」

フランクスが少し心配そうに訊いてきたから、勢いよく頷いた。

「アスター王子が馴染むための訓練方法を考えてくださったからね。今はある程度制御できるようになったよ」