「ほれ、水分補給しとけ。どうせ水筒もう空だろ?」

さすがに、1年以上わたしと一緒に切磋琢磨してきた従騎士仲間。わたしが運動しだすと大量の水分補給を必要とすると理解してるから、追加の水筒を持ってきてくれていた。

「ああ、ありがとう」

6月に入ると、さすがに夜間でも空気に昼間の熱が残り暑い。身体を軽く動かすだけで汗が噴き出してくる。
だから、今もシャツが大量の汗を吸いベタベタだ。

フランクスから受け取った水筒に口をつけると、改めて喉がカラカラだったと気づく。一気に飲むと身体に良くないから、少しずつ喉を潤した。

「ふうー…いつもありがとう、フランクス」
「いや…ってか、そろそろ水筒を何本か用意しとけよ」
「なんか、時間が惜しくなっちゃうんだよね」

ひょうたんをくり抜いて加工した水筒は、常にひとつ身に着けている。追加の水筒を使うには、一度寮に取りに戻らなきゃならない。その時間が惜しくて、ついつい訓練場に直行してしまうんだ。

「まぁ、気持ちはわかるがな」 

準備運動で軽く身体をほぐしたフランクスは、今日は真剣で打ち込みをするみたいだ。見習いとして日が浅いわたしと違い、フランクスはわたしより年下でも見習い期間ははるかに長い。春に本物の剣の帯剣許可を得てから、ずいぶん剣技が上達した気がする。