【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


(日の構えだ…!)

アスター王子はいわゆる上段構えの状態で、人形に向けて剣を構える。開いた左足を前に、右足は軽く曲げ踏ん張るように。

「はあっ!」

裂帛の気合一閃。
アスター王子がロングソードを振り下ろした、と思った瞬間にすでに人形は真っ二つに斬れ、そのまま左右に落ちていく。

「速い…!」

思わず見とれてしまうし、無意識にそう口にしていた。

硬く丈夫な訓練人形を真っ二つにしたのに、上半身はまったくブレずに無駄な動きがない。流れるような力の動き。
腕や上半身の力だけで剣を振るのではなく、足先からの力の流れが見事に乗って剣に伝わってる。まさに、わたしが目指す剣の動き。

「やっぱり、アスター王子はすごいですね……剣術だけが」
「おい、剣術“だけ”の部分に力が入ってないか?」
「気のせいですよーキノセイデス」
「棒読みやめろ!」
「はい。ぼくも早くアスター王子のようになりたいです。剣術限定ですが」
「だから、なんで剣術限定だ?」
「ヒトマエデヨロコンデハダカニナル変態ニハナリタクハアリマセンカラネー」
「誰が変態だ!それに、誰が喜んで裸になってる!?」
「アスター王子ですが?朝のストリーキングを庇ったぼくの苦労をわかってますか?」
「あれは、わざとじゃない!」

なんだかんだと、いつものおちゃらけた雰囲気で真面目な空気がぶち壊しになりましたけど。一応、アスター王子には剣術指導もしていただきました。