アスター王子の顔が近くなるだけで、ドキドキと鼓動が早くなる。以前から綺麗だと思っていた整った美しすぎる容貌は、こんな時には凶器にも等しいと思う。
いつもだったら、“なんで顔を近づけるんですか!”と、反射的に引き剥がしていた。今も、そうしたい。そうしなければ、なんだか危機感を感じてしまうから。
でも、それじゃいけないんだ。
わたしは女性としても騎士としても未熟で、あらゆる経験や知識が不足している。ここは、アスター王子の思うようにさせてみよう。
女は、度胸だ!
「……わかりました。これくらいなら、なんとか耐えられます」
わたしがそう返事をすると、なぜかアスター王子が顔をそむけて噴き出した。
「耐える……さすがにミリィらしい答えだ」
「はぁ…他にいい言葉はなかったので」
「では、これはどうだ?」
あ、と思う間もなかった。いつの間にかアスター王子はわたしを抱き上げると、椅子に座った自分の膝の上にわたしを乗せる。
「……え?」
わたしの両手はアスター王子の首に回され、そのまま向かい合う身体が密着する形になる。いつになく彼のたくましさやぬくもりを感じてしまい、頭が真っ白になってしまった。



