「……それはともかく、だ」
ゴホン、とアスター王子が咳ばらいをして仕切り直し。面目丸つぶれはいつもの事ですがね。
「正直兄上たちよりも、オレはそういった恋愛経験が少ない……というか、皆無だ。だからスマートなエスコートができなくて済まないと思う」
彼はさらっと話してはいるけれども……この事実を告白するのに、ずいぶん勇気を振り絞ったんだろう。
男性は自尊心が女性より高い、とお父様からお聞きしたことがある。だから、それをかなぐり捨ててこうして話してくださるということは……それだけ心を許してくださっている、という証拠。
アスター王子は王族にしてはずいぶんと気安く親しみやすいお方だ。それでもやっぱり他人にはきちんとした一線を引いている。
その人が、今まで誰にも話していないであろう事実をきちんとわたしに伝えてくださっている。それは、じわじわとわたしの中に染みとおって、嬉しさをもたらした。
「……別に、今さらですよ。それに、わたしも恋愛経験はありませんから、恋人らしさとか婚約者らしさとかまったくわかりません。つまり、2人とも恋愛初心者って事です」
ごちゃごちゃ言っても仕方ないから、事実だけをズバッと総括しておいた。その上で、わたしは自分なりの言葉をアスター王子にかける。
「だから、いいんです。アスター王子、わたしたちはまだ恋愛見習い……ならば、これから少しずつ学んでいきましょう。騎士を目指すことと同じですよ」



