【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


アスター王子はわずかに苦みのある声で、話してくださった。

「ミリィも知っての通り、母上が原因不明の眠り病でいらしたからな。どんな名医も魔術師もさじを投げる状況では、いち個人として出来ることに限界はある。だから、解決策を求め騎士になることに決めた。騎士になれば各地へ派遣されるチャンスがあるからな。調べたらなにかわかるかと思ったんだ」

それは、御父上であられる国王陛下からお聞きしていた。陛下はずいぶんとこの件で“手助けできることが出来なかった”とご後悔なさっておらたけれども…。

「正直、必死だった。無我夢中で母上のためになることばかり考えて……精神的な余裕などない。だから、他の騎士連中は普通に人として当たり前な経験を積んでいたが、オレはまったく関心がなかった。同僚や仲間や部下からは色恋沙汰の話を聞かされたが、本気で自分自身に重ねたことはない……そうこうしているうちに、なぜか英雄扱いされてきたのは辟易したが」
「あなたが騎士に向きすぎてたからですよね」

さすがにここは一度突っ込みを入れてしまう。

「わたしのエストアール家の所領は辺鄙な田舎ですが、そこの民ですら皆知っていましたからね。あなたの活躍ぶりを。騎士中の騎士だ、と皆が褒め称えていました」

わたしがこう告げると、アスター王子の肩が揺れる。

「……別に、そんなことオレは望んではいなかった」
「でしょうね」

わたしは知ってる。アスター王子が御母上様を助けるために、どれだけ自分自身を犠牲にしてきたかを。

「あなたはただ、御母上様を助けたい…それだけが望みでいらしたんですからね」