【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「ずいぶん頑張ってるな」
「アスター王子!?」

最低限の灯りしか点けてない薄暗い鍛錬場で、とっくに宿舎に帰ったはずのアスター王子が姿を現した。
1時間前に馬上槍試合の練習が終わり、今は日付が変わろうかという深夜。当然身体が資本の騎士や騎士見習いは就寝しなくてはならない時間だ。
睡眠不足は著しくパフォーマンスを下げるから。
常に万全を期すための自己管理は騎士の必須スキルだ。

「まだ起きていらしたんですか?」
「ああ。最近はいつもこの時間に訓練しに来てる。書類仕事だけでは鈍るからな」
「……まさか、ぼくのお父様に書類仕事を押し付けてませんよね?」
「まさか!ちゃんとやってる……つもりだぞ、うん」
「なぜ、間が空くんですか?ぼくの目をちゃんと見て答えてくださいよ」
「失礼な!やましくはない…ぞ?」
「……目が泳いでますけど?」

ほんと、仕方ないなあとため息をつきたくなる。

「それはいいですから、さっさと体を動かしてさっさと寝てください。また寝坊しますよ?」
「わ、わかってる」

アスター王子は腰に下げた鞘から剣を抜くと、軽く構える。ふぅ…と小さく息を吐くと、たちまち表情も雰囲気もガラリと変わった。