【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


アスター王子はどかっとサイドテーブルに座ったけれども、なぜか後ろ向き。

そして、なにか小さな声でぼそぼそ言い始めた。

「……オレも、正直……恋愛とは無縁できた」
「え、そうなんですか?」

ようやく聞き取れた内容は、アスター王子の意外な事実の告白。
騎士見習いならば、誰もが憧れる英雄が。若くして騎士中の騎士と称される、お父様すら認める方が…モテにモテて、恋愛沙汰のひとつやふたつあってもおかしくはなかったろうに。

あ、とそこで思い出された。父上であられる国王陛下から聞かされたお話…アスター王子は御母上様であるソニア妃の長年に渡る眠り病を解決するため、自ら志願して騎士になったのだ…と。
わずか5つの頃から、過酷な毎日を過ごし…結果的に英雄と呼ばれるまでの騎士になったものの、御母上様は昨年まで15年近く眠りに着いたままでいらした。
どんなに忙しくとも、アスター王子は御母上様へのお見舞いを毎日毎日欠かさなかった。

子どもとして、精一杯のことをされてきたんだ。

毎日、毎日。変わらない御母上様のお顔を見つめながら、たった独りどんな思いでいらしたんだろう。

確かに、そんな状況では年頃のごく普通の少年少女のように、恋愛に胸をときめかせている場合ではないかもしれない。