【完結】捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?


「ありがとうございます。これはいただきますね」

アスター王子がまたサンドイッチを作って持ってきたから、それだけは食べることにした。バゲットにバターを塗り、厚切りのハムを挟んだシンプルなパンだけど、これもわたしの大好物。

「熱は?」
「ほとんど下がりました。アスター王子が休ませてくだったおかげです」
「…そうか」

アスター王子がホッとした顔をするのが、なんだかかわいらしい。わたしを本気で心配してくれているのが伝わってくる。

そして、彼はサイドテーブルにある一冊の本を見つけて、不思議そうに眺める。

「“魔術の基礎知識”…?誰かに借りたのか?」
「はい。マリア王女が持ってきてくださいました。わたしの発熱の原因がブラックドラゴンの短剣に宿る魔力だ…と、ソニア妃殿下がおっしゃいましたので、今さらですが少しずつでも勉強しようかと」
「……そうか」

たぶんアスター王子もわたしの発熱の原因は把握していたけど、きっと休ませるためにわざと言わなかったんだろうな。確かに近ごろのわたしは多忙過ぎた、と今のわたしは思う。1日休んだだけでも、体が楽になった。

「アスター王子が休ませてくだったおかげで体が楽になりました。ありがとうございます。明日から、また復帰しますからね」
「……ああ」

反対するかな?とちらっと思ったけど、案外あっさりとOKが出て少し拍子抜けした。